研究概要

Research summary

研究概要

研究プロジェクト「化学物質の鳥類卵内投与による性分化異常評価手法の開発とテストガイドライン化に向けた提案(令和4年度環境研究総合推進費 環境問題対応型研究 採択課題)」では、鳥類の繁殖機能に及ぼす化学物質の毒性影響を予測することが可能な、新しい試験法を開発します。開発する試験法では、親鳥でなく卵を用い、卵の中にある胚形成期の性分化に対する化学物質の影響を評価します。この試験法(卵内投与試験法)が実用化できれば、化学物質の安全性評価の効率化に寄与するだけでなく、動物実験の削減にも大きく貢献できます。本研究プロジェクトでは、将来、国際的な試験法(テストガイドライン)として確立するために、最新の科学的知見を提供します。

近年、野生鳥類種の生物多様性は急速に減少しています。この原因として、農薬などの化学物質が鳥類の生存と繁殖に悪影響を及ぼしている可能性が指摘されていますが、鳥類に対して化学物質がどのように作用するのかは不明な点が多いのが現状です。レイチェル・カーソンは、著書「沈黙の春」のなかで、環境中に拡散した化学物質の危険性を「そして、鳥は鳴かず」と表現されました。そのような事態を起こさないためには、食物連鎖の頂点にある高次捕食動物への有害性を評価する必要があります。現在、鳥類繁殖毒性試験(OECDテストガイドライン206:TG206)に基づく調査が行われていますが、この試験には費用や時間がかかることが課題となっています。

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鳥類繁殖毒性試験(TG206)を行うには、多額の費用とともに、多くの親鳥を使用しなければなりません。近年、動物愛護の観点から、実験動物の数を減らし、可能な限り動物実験の代替手法による試験が求められています。卵を用いた試験法によって、鳥類の生存や繁殖への影響を予測できれば、親鳥を犠牲にしなくても良くなり、実験動物の数を減らすことに繋がります。生命に共通な現象である胚の「形づくり」に焦点を当てれば、すべての鳥類ひいてはその他の動物種への有害性を評価することができると考えています。この研究プロジェクトでは、「親鳥から卵への影響評価」を「卵から親鳥への影響評価」にパラダイムシフトすることを目指しています。

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鳥類種を保全するには、個体数の維持が重要です。当然、動物にとって個体数の維持には繁殖が不可欠です。卵の試験法では、卵の中にある胚の繁殖に関係する細胞や器官を調べます。繁殖に関係する細胞と器官には、始原生殖細胞(卵子と精子のもとになる細胞)、生殖腺(卵巣と精巣)、そして、生殖腺の働きをコントロールする脳があります。発生初期の胚では、これらの細胞・器官は性的に未分化な状態ですが、その後、雌型あるいは雄型に分化します。性的に未分化な状態から雌型あるいは雄型になることを“性分化”といいます。性分化に異常が起これば、親鳥に成長した時の繁殖能力にも異常が生じます。繁殖毒性試験において、性分化異常を検出するエンドポイント(毒性評価指標)を見つけることが重要です。

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